9月5日 嵐山勉強会

長かった酷暑もようやく一段落しましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
B4ミズノです。

9月5日、嵐山の天龍寺において嵐山についての勉強会が開かれました。当日の午前中、激しい雨が降っており、現地見学会を心配していましたが、見事にハレ。むしろ蒸しました。日がサンサンと降り注ぎ、大堰川の上流には嵐山が青々と茂っておりました。

現地見学会では、地元の方々に大堰川周辺の現状について説明を頂きました。昨年の洪水では、全身が浸かるほど溢れ返ったとのお話を伺い、大変な災害であったように感じました。しかし、現状の被害は許容できる範囲であり、これ以上の防災対策(河岸の防壁)は景観を損ねるので必要ない、といった意見もあり、防災と景観の両立について考えさせられました。

現場見学会が終わると、予定通り講演会が進められました。
まずは、天龍寺の宗務総長 栂承昭さんから挨拶を頂きました。
話題提供者は発表順で、深町加津枝先生(京都大学環境デザイン学)、那須将さん、後藤田さん、山口敬太先生、窪田亜矢先生(東京大学地域デザイン)でありました。
プログラムは以下の通りでした。

深町加津枝先生 「嵐山の景観に見る地域らしさ」
那須将さん 「歴史資料から見た嵐山の景観」
後藤田さん他 「嵐山における筏プロジェクト」
山口敬太先生 「歴史と事例から見る河川景観整備のあり方」
窪田亜矢先生 「大槌町(岩手県三陸)における防災と景観の取り組み実態」

最後は柴田昌三先生(京都大学環境デザイン学)が講評をされました。

 
 
深町加津枝先生
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山口敬太先生
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窪田亜矢先生
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全て興味深いお話でとても勉強になったのですが、恐縮ながら一部だけ掘り下げて紹介させて頂きたいと思います。

 
 
那須将さんの「歴史資料から見た嵐山の景観」に関して。

『今の時代、情報は簡単に手に入り、観光客はあらかじめ観光地のイメージを持っている場合がほとんどである。つまり、多くの人々はあらかじめメディアによって形作られた「見かた」を通して景色を見ている。人々が満足する為には、この「見かた」に応えられるようなまちと、それをつくるまちづくり活動が必要になる。この「見かた」を追体験が出来ない場合、観光客はイメージとの乖離に落胆してしまう。(一部要約)』

時代を経て形成される眺望の「かた」について、とても興味深く話を聞かせて頂いた。確かに嵐山の歴史の中で作り上げられてきた「見かた」は強力なポテンシャルを持っている。しかし、同時に価値評価の方法を限定する可能性も孕んでいると感じた。嵐山が観光地としてさらに発展するために、まだ知られていないポテンシャルを発掘することが出来て、そのためには、新しい「見かた」を提供し、それを共有、また定着する方法を考えることも必要かと思われた。

 
 
講演会が終わると、懇親会が開かれました。 
ザンネンながら私は参加できなかったのですが、とても盛り上がっていたそうでした。今後も研究会が開かれると聞いたので、また、素晴らしい先輩、先生がたのお話を聴けるのを楽しみにしております。清涼の季節ですが、ますますのご活躍のほどをお祈り申しあげます。では。

水野裕介

8月13日 2014伊庭絵日記

今年もこのシーズンがやってきました。そうです、絵日記です。

8月13日、滋賀県東近江市伊庭町で行われた、まちのお祭り「絵日記」に、M2の八尾、OBの高橋さん、そして山口助教が参加してきました。

伊庭町では現在、水郷集落の重要文化的景観選定を目指し、さまざまな活動・調査が行われています。私たちの研究室からも、これまでのOB・OGを含めメンバーの多くが活動・調査に携わってきました。

昨年度の絵日記では、伊庭町の若者世代が中心の「絵日記実行委員会」と協働で、伊庭の水路を利用した「川床カフェ」と、田舟イベントを企画しました。今年はなんと、絵日記実行委員会の方々が100%オリジナルで川床を運営してくださるということになり、「ぜひ遊びに来てください!」と、私たちは招待されることになったのです。

9日に開催されるはずが、台風の影響もあり延期となってしまい、天気が心配でした。しかし、13日はちゃんと晴れてくれました。

 

伊庭の人々お手製の川床

絵日記実行委員会のお手製の川床

川床の奥には田舟が見えます

川床の奥には田舟が見えます

 

雨の影響もあり水位がかなりあったのですが、そのおかげで水にかなり近い場所でくつろぐことができ、真夏の暑さも吹き飛ぶものでした。

18時30分、実行委員会委員長の田辺さんの合図により、絵日記が始まりました。年配の方から地元の子どもたちまで、たくさんの人で賑わいました。

 

なにかのショーが始まりました

なにかのショーが始まりました

人々で賑わう謹節館前広場

人々で賑わう謹節館前広場

子どもたちお手製の提灯が輝きます

子どもたちお手製の提灯が輝きます

 

日が暮れ、祭りが盛り上がると同時に、川床も大盛況。ビールを片手に人々が集まり、語らっていました。私たちもその輪に紛れ、伊庭の方々からたくさんのお話をうかがいました。

「去年はこの川床で飲み過ぎてしまった」と、昨年の川床イベントを思い出される方もいれば、「今年もこうやって川床に人が集まってうれしい」と、実行委員会主導の企画を喜んでいらっしゃる方もいました。このように、水路をより近く感じられる川床イベントが「年に1度のお楽しみ」となってきていたので、これからも水路を中心としたまちの風景が大切にされることでしょう。

早くも、22回目を迎える来年の絵日記が楽しみです。ちょっと気が早いですかね。

 

大盛況の川床でした

夜の川床は大盛況でした

伊庭川床2014_2
 

(八尾修司)

7月11日 無鄰菴勉強会

7月11日 数日前までは台風直撃を予想していましたが、
京都市は台風一過で天気は晴れ、かなり蒸し暑い1日となりました。場所は無鄰菴母屋2階です。

今回は樋口忠彦先生を迎えて、 無粼菴と野(山の辺)の景色に関する勉強会を開きました。

母屋2階からの庭の全景

母屋2階からの庭の全景


無鄰菴は明治期の琵琶湖疏水開通に合わせて建てられた山県有朋の別邸で、その後の京都岡崎の別荘地、庭園群が形成されていく先駆けにもなった庭園です。

勉強会は樋口先生のメモとお話をもとに進められました。無鄰菴の庭園の眺望は、母屋側から 里から野へ、野から湖、渓流へと推移・変化していること、これらの空間変化と遠近法の関係、意匠の関係など。

樋口先生のお話を1度頭に入れた後に 色々な視点場、前景、中景、後景などに注意しながら、庭園内を皆で1度思い思いのことを話しながら歩きました。
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ベストショット!!

ベストショット!!

普通の日本庭園は理想の幻想郷を描くのに対して、無鄰菴では里や山村とそこにあふれる魅力的な自然を描いている点、遠近法を用いて庭園の眺望を構成している点などから、無鄰菴という庭園の特殊性を見出すことができました。

私がその特殊性について特に驚いたのは、これらの視点を踏まえたうえで庭園を歩いたり、他の庭園を歩いた記憶を思い返したりすると、今まで見てきた庭園の景色を新しく捉えなおすことができたことです。
樋口先生、山口先生、勉強会に参加してくださった学生の皆さん、とても楽しく、有意義な勉強会でした。ありがとうございました。

今泉遼