2020年12月

11/28三条デザインワークショップ成果発表会+シンポジウム

今年の8月から4日間実施された三条通デザイン・ワークショップ(DWS)の成果発表会+シンポジウムが開催されました。

本WS事務局を務める谷川(景観設計学研究室D2)が報告いたします。

成果はこちらのウェブサイトからご覧ください。https://kyotosanjyo.wordpress.com

 

成果発表会

会場は文化博物館の6階和室をお借りして,会場とオンラインの同時開催で行いました。はじめに,森本会長から開会のご挨拶をいただき,山口先生から本DWSの趣旨をご説明いただきました。

次に,DWSの成果発表会に移ります。

A班のテーマは,「仕合わせ,出会う,寄り通(みち)〜無用の用から考える道路空間再編〜」です。身の回りのあらゆるモノがネットで検索できる時代に,まちに生きる”しあわせ”の価値を考え直す,という課題に取り組みました。通りに混在する異なる仕事のプログラムが日常のストーリーのなかで自然とかけ合わさるような仕掛けや,純粋に景色を楽しめる居場所づくりが提案されました。

会場からは,視点場や視対象の設定をさらに掘り下げ,ソフトプログラムをハードとの関係性をうまくつなぐ仕組みをつくることができるのではというご助言をいただきました。

B班のテーマは,「間をつなぎ,懐の深い三条通へ」です。沿道の小さなスペースと道路空間がシームレスに溶け合うような通りの活用提案が行われました。折りたたみ式ファニチャーを使ったライトアップイベントの開催から,フラットな道路空間のデザイン,事業者のコラボレーション,空きテナント活用に至るまで幅広いアイデアが提案されました。

会場からは,小さな場所を誰が活用・管理するのかを具体化することで提案が更に現実味を帯びてくるのではないか,というご助言をいただきました。

C班のテーマは,「MELT in SANJO 店舗を起点とした「つながり」により文化が融合し,進化し続ける三条通」です。店舗連携のための組織を立ち上げ,社会実験をもとにつながりを生み出す提案がなされました。また,道路線形による自動車の速度抑制や,一部区間の歩行者空間化によるアートイベントの開催など,通りが人のための空間に変わっていくシナリオが描かれました。

会場では,店舗事業者の方からご意見をいただきました。店舗同士の協力体制ができていないという課題を解決する視点が他の案にはない特徴であり,これを期に店舗同士のつながりを生んでいきたいと力強いお言葉をいただきました。

D班のテーマは,「「辻の間」〜三条の魅力が滲み出るよう辻の間を化粧する〜」です。縦の通りの特徴を活かした通りのレシピ(使い方)を活用したアクションプランが提案されました。舞台の辻,緑の辻,文化芸術の辻など,辻を中心に通りに個性が生まれるストーリーが描かれました。

会場からは,三条通の資源を読み解き,レシピを選んでいく考え方について掘り下げると使い手にとってよりわかりやすいものになるとのご助言をいただきました。

休憩中は,各班のボードを設置して,参加者のみなさまにご意見をいただきました。

 

トークセッション

後半のトークセッションでは,パネリストの先生方に各班の提案に関する講評やこれからの三条通の将来像について,ご議論いただきました。以下,議論の内容になります。(パネリスト:泉英明先生、泉山塁威先生、岩瀬諒子先生、森本浩行先生 進行:山口先生)

<全体を通して>
仕組み・歴史・デザインについて全方位的に考えられており,クオリティが高い。一方で,一言で表せるような提案が地元にとってはわかりやすい。誰に火をつけるのかを意識して提案すると実現に近づく提案になる。

<A班について>
若者の出会いの場として期待できる,ゆるやかな共同というコンセプトはリアルな提案である。一方で,どういうシーンをイメージしているのかが見えづらい。スポットの提案はあったが,動線を考えても面白い。一番の視点場を探し開放するプログラムを提案するなど発展の可能性がある。

<B班について>
ファニチャーの収納まで考えられており,既存の要素を活かしたタープの提案など実現性が高い。祇園祭の縄がらみに着目したのは,全体のコンセプトとしても拡張できるのではないか。新たに何かを付加する提案が多いが,店舗側から開いていくような要素もあっても面白い。夜間景観で一体感を出せるという意味でのシームレスも考えられる。

<C班について>
縦の通りにも着目していて,田の字地区全体としての提案として考えられる。店舗同士の連携を中心に置いているが結構大変なので,参加したくなるイベントなど最初のステップが重要。道路の線形のアイデアは面白いが,もう少し自由な線形だと活用しやすい。日常のバラエティ,役割と活用の多様性が必要。防火壁に着目した照明のデザインの発想が面白い。

<D班について>
辻の間というみんなで一緒に考えたくなるワード(コンセプト)を生み出した。一方で,辻の間の個性を活かすという意味が分かりづらい面もある。可動のものが他の辻に動くなどのアイデアが生まれると面白い。角はエリアイメージを形成するポイントにもなる。辻の連続性がアイレベルの景色として見えてくると良い。

各チームに参加された三条通の皆様からも,全体を通してご意見をいただきました。
・イベント的な提案が多いが,三条通り全体としてのイメージを共有したい。
・既存のイベントとも関連させて,具体的に進めていきたい。
・三条に関わる人のことを真剣に考えていて,真摯な姿勢が提案に現れていた。
・アイデアが発散していったが,そのような議論の過程が一生の体験になる。
・三条通に関わる人が出てきて一緒に考えていきたいと感じる発表だった。

最後に,各賞の授賞式を執り行いました。受賞者は以下の通りです。

京の三条まちづくり協議会賞
C班:諏訪淑也、清水康晶、中田朱音、内山里佳

三条通デザインワークショップ実行委員会賞
D班:渡辺奈々恵、張天葉、棚田有登、梶川遥奈

審査委員特別賞
B班:竹中健起、冨村郁斗、森章太郎、吉武駿

特別賞
A班:上田真子、衣笠恭平、芳田知紀、吉野和泰

今回,U-30と地域の方々がチームを組んで,講師の先生方との活発な議論を通して,魅力的な4つの提案が生まれました。それぞれが個性豊かな提案ですが,全体として目指す三条通の姿が少しずつ見えてきたような気がします。今回の成果発表会がまた新たなスタートラインになり,これから,全体のビジョン作成,そして実現へ進んでいきます。

最後に記念撮影を行いました。三条通プロジェクトメンバーの皆様,参加者,関係者の皆様,ありがとうございました。

谷川陸(三条通DWS事務局、景観設計学分野D2)

10/2.24,11/15 2020年度 乙訓景観フォーラム

10/2,10/24,11/15 に2020年度の乙訓景観フォーラムが開催されました。
全3回の講演・現地見学を行い、川崎先生、山口先生にもご講演頂いたほか、D2谷川さん、D1田中がお話しさせて頂きましたので
その概要を田中から報告させて頂きます。

第1回 10/02 @長岡京
川崎先生講演「長岡京の景観を考える」
乙訓の景観カード鑑賞会①

初回は基調講演として、川崎先生から、市街地から西山にかけての緩やかな緑の流れや、それを背景とした景観行政についてのご講演を頂きました。長岡京の中小路市長にも来て頂くことができました。参加者の皆様からも積極的なコメントや意見があり、長岡京の将来像について、活発な議論が交わされました。


第2回 10/24 @長岡京
谷川さん講演「京都の風致行政-乙訓の風致保全の実態-」
乙訓の景観カード鑑賞会②
長岡禅塾見学

第2回には、D2の谷川さんが、京都の近代化に対する風致行政の指導実態と乙訓の風致について講演されました。風致保全のための指導内容と設計変更のプロセスを追う難しい内容でしたが、谷川さんの丁寧な説明もあり、参加者の皆様にも興味を持って聞いて頂けたようでした。


午後には長岡天満宮西側の長岡禅塾を見学させて頂きました。敷地の周縁に植樹された高木によって周辺の喧騒から離れた空間で、じっくりと見学・座禅体験をさせて頂きました。


【谷川感想】 今回,発表を通して地域の方々と広く意見交換ができ,自分の研究を他者の視点から見直す大変よい機会となりました。これからの乙訓の風景デザインを考える上でのヒントも議論のなかで得られたと思います。禅塾では,周囲の環境と調和する敷地・建築のなかで,座禅をはじめて体験しましたが,何も考えないことがこんなにも難しいものかと驚きました。庭や建物は毎日掃除されて,とてもきれいで,感動しました。このような貴重な機会をいただきましたことを,チーム乙訓代表の鵜野さんはじめ関係者の皆様に感謝いたします。


第3回 11/15 @洛西地区
山口先生講演「京の西山の風景」
田中講演「中世以前の文学にみる乙訓の風景」
大原野神社見学

第3回には、洛西地区に場所を移し、山口先生に嵯峨野における風景の生成・再編・再生の歴史的過程をぎゅっと濃縮したご講演を頂きました。また、D1田中が修論を元にした内容で、大原野から向日、山崎、淀、八幡、鳥羽まで広域的にみた風景イメージについてお話をさせて頂きました。


午後には大原野周辺のまち歩きと正法寺、大原野神社の見学をさせて頂きました。普段通り過ぎてしまう境内の中にも、様々な由緒があり歴史の舞台があり、地域との繋がりがあることを実感しました。


【田中感想】
今回、自分の研究の内容をゼミや学会以外の場所で、初めて発表させて頂き、非常に有意義な経験になりましたし、参加者の皆様にも受け入れて頂けて、一安心しています。参加者にとって初めての内容を、一回で分かりやすく話すためにどうまとめるか、と考えている中で、自分の中でもより研究への理解が深まったように思いました。
また、自分の住んでいる地域にどのような歴史があり、その中でどのような風景や文化、生活が生まれてきたかを改めて知り、共有し、実際に歩いて体験することが大事だと、改めて感じました。コロナ禍で自宅やその周辺で過ごすことが増える中で、改めて自分の住む地域に向き合うことも必要かと思い直すきっかけにもなりました。

(D1 田中)