シンポジウム・講演会

12月19日 平成26年度清緑会冬季見学会&講演会

こんにちは,M2の八尾です.厳しい寒さが続きますね.

12月19日,平成26年度清緑会の冬季見学会と講演会に参加してきました.見学会にはM2八尾,畠中,大川さんと山口助教,そして講演会にはこのメンバーに加えM1諏訪が参加しました.

このイベントのうち講演会では,私の修士論文のテーマである「総合大阪都市計画における公園および公園道路の計画」について発表させて頂きました.

まずは見学会.大阪市東部方面公園事務所長の馬渡肇氏のご案内のもと,大阪城公園の見学会が行われました.

 

馬渡氏によるご説明

馬渡氏によるご説明

 

私は高校3年時の遠足で訪れて以来の大阪城公園でしたが,今回は専門家による説明を聞きながら見学することができ,見識を深めることが出来ました.また,PMO導入による世界的な観光拠点化を目指す話や,プロジェクト実現のための募金の話など,将来の公園施策に関するお話も聞くことが出来ました.

 

石垣とお堀

石垣とお堀

大阪城

大阪城

 

そして講演会.本講演会が実現したのは,私が史料収集でお世話になっている,NPO国際造園研究センター理事の繁村誠人氏のご尽力によるものです.

講演会には府・市の現役の公園技術者,およびNPOの理事の方が多く参加して下さいました.

 

山口先生によるイントロダクション

山口先生によるイントロダクション

八尾による発表

八尾による発表

 

講演会のタイトルは「大阪発,公園道路網が計画された戦前期大阪の総合大阪都市計画」.当時,日本で初めて都市計画決定された”公園道路”に焦点を当て,総合大阪都市計画にみる都市緑化の先見性に着目して発表しました.

大阪府および大阪市では現在,公園・緑地のあり方の見直しやさまざまな都市緑化施策を進めており,それに対し一示唆を与えられる研究発表を目指しました.特に,1928(昭和3)年に決定した総合大阪都市計画の公園計画は,現代の都市計画公園の基礎となっており数多くが引き継がれています.そのため,現代の視点のみでは読み解けない過去の計画を,当時の計画思想から読み解くことの重要性を示すことが大切なことでした.

 

質疑応答にて

質疑応答にて

NPO国際造園研究センターの繁村理事(右端)

NPO国際造園研究センターの繁村理事(右端)

 

発表で予想以上に喋り過ぎてしまい,質疑応答の時間が限られてしまいましたが,続きはその後の懇親会にて,お酒を飲みながら行われました.感想をうかがうと,「この計画の考え方や大きなビジョンをもっと早く知っておけばよかった」,「技術者が歴史を理解しておくことは義務だ」など,公園緑地に関する歴史研究の意義に理解を示して下さるコメントを頂くことが出来ました.中には「感動した!!」とおっしゃった方も居て,これには私も感動しました.

今回の講演会はシニアなメンバーが多く,若手技術者の参加が少なかったことから,「この話を是非,若手技術者にもしてほしい」というご意見も頂きました.もしかしたら,近いうちに第2弾も開催…なんてことになるかもしれません.

 

このテーマで研究を始めてもうすぐ3年になりますが,学術の世界で閉じた研究ではなく,このように現役技術者の皆さんに対して問いかけられる研究に発展させることができ,非常にうれしく思っています.本講演会の実現に尽力して下さった繁村氏をはじめ,私の研究に対して常に真摯に向き合ってくださった研究室の先生方には感謝してもしきれません.本当にありがとうございます.

修士論文提出まで残り2ヵ月を切りましたが,頂いたご指摘・ご助言をもとに,研究をさらなる高みへともって行きたいと思います.

 

(八尾 修司)

9月5日 嵐山勉強会

長かった酷暑もようやく一段落しましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
B4ミズノです。

9月5日、嵐山の天龍寺において嵐山についての勉強会が開かれました。当日の午前中、激しい雨が降っており、現地見学会を心配していましたが、見事にハレ。むしろ蒸しました。日がサンサンと降り注ぎ、大堰川の上流には嵐山が青々と茂っておりました。

現地見学会では、地元の方々に大堰川周辺の現状について説明を頂きました。昨年の洪水では、全身が浸かるほど溢れ返ったとのお話を伺い、大変な災害であったように感じました。しかし、現状の被害は許容できる範囲であり、これ以上の防災対策(河岸の防壁)は景観を損ねるので必要ない、といった意見もあり、防災と景観の両立について考えさせられました。

現場見学会が終わると、予定通り講演会が進められました。
まずは、天龍寺の宗務総長 栂承昭さんから挨拶を頂きました。
話題提供者は発表順で、深町加津枝先生(京都大学環境デザイン学)、那須将さん、後藤田さん、山口敬太先生、窪田亜矢先生(東京大学地域デザイン)でありました。
プログラムは以下の通りでした。

深町加津枝先生 「嵐山の景観に見る地域らしさ」
那須将さん 「歴史資料から見た嵐山の景観」
後藤田さん他 「嵐山における筏プロジェクト」
山口敬太先生 「歴史と事例から見る河川景観整備のあり方」
窪田亜矢先生 「大槌町(岩手県三陸)における防災と景観の取り組み実態」

最後は柴田昌三先生(京都大学環境デザイン学)が講評をされました。

 
 
深町加津枝先生
IMG_9525

山口敬太先生
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窪田亜矢先生
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全て興味深いお話でとても勉強になったのですが、恐縮ながら一部だけ掘り下げて紹介させて頂きたいと思います。

 
 
那須将さんの「歴史資料から見た嵐山の景観」に関して。

『今の時代、情報は簡単に手に入り、観光客はあらかじめ観光地のイメージを持っている場合がほとんどである。つまり、多くの人々はあらかじめメディアによって形作られた「見かた」を通して景色を見ている。人々が満足する為には、この「見かた」に応えられるようなまちと、それをつくるまちづくり活動が必要になる。この「見かた」を追体験が出来ない場合、観光客はイメージとの乖離に落胆してしまう。(一部要約)』

時代を経て形成される眺望の「かた」について、とても興味深く話を聞かせて頂いた。確かに嵐山の歴史の中で作り上げられてきた「見かた」は強力なポテンシャルを持っている。しかし、同時に価値評価の方法を限定する可能性も孕んでいると感じた。嵐山が観光地としてさらに発展するために、まだ知られていないポテンシャルを発掘することが出来て、そのためには、新しい「見かた」を提供し、それを共有、また定着する方法を考えることも必要かと思われた。

 
 
講演会が終わると、懇親会が開かれました。 
ザンネンながら私は参加できなかったのですが、とても盛り上がっていたそうでした。今後も研究会が開かれると聞いたので、また、素晴らしい先輩、先生がたのお話を聴けるのを楽しみにしております。清涼の季節ですが、ますますのご活躍のほどをお祈り申しあげます。では。

水野裕介

4月18日 新年度特別セミナー

4月18日,研究室新年度特別セミナーを開催しました.
お二人の講師を招いて,それぞれ下記のテーマでお話しいただきました.

講師 
 八木弘毅(株式会社日建設計シビル)
  「土木デザインという仕事」

 岩瀬諒子(岩瀬諒子設計事務所,東京藝術大学助手)
  「デザインプロセス・ディベロップメント」
 
 

写真 1

日本全国にわたって都市空間の高質化,さらには海外でも活躍されている八木弘毅さんからは,
土木デザインという業務のあり方,仕事の仕方,考え方,デザインプレゼンテーションにおいて
やるべきこと,デザインチームの役割と自分の位置づけ,土木でデザインをするということの可能性,
学生時代に何を勉強すべきか,と,多岐にわたって,熱く刺激的なお話しをしていただきました.
 

 写真 3

木津川コンペ最優秀賞,U30ガラス建築の設計競技最優秀賞など,近年大活躍中の岩瀬諒子さんからは,
デザインのプロセスについてのレクチャーでした.
リサーチ、ビジョン、客観視、ストーリー、プレゼンテーション、というステージで
それぞれどんなことをやりながら,形をつくりあげていくのか,ということを,
コンペで最優秀賞をとり実作ともなった”KUSANAMI”プロジェクトの具体的内容をもとに,
オリジナルのスケッチやムービーなどをまじえながら,お話しいただきました.

 
研究室OB・OGであるお二人のお話には,デザインをするという行為における,インテリジェンスと
クリエイティビティのあり方がどういうものなのか,ということが,具体的な中身を
ともないながら,明快に説明されておりました.
 
 
その後,新M1の四年生時の卒業設計に対するエスキスが行われました.
鋭い質問や丁寧でやさしい意見を,是非実りあるものにしてほしいと思います.

ということで,レクチャー,エスキスともに,これから土木デザインや研究を志す学生達にとって
非常に有意義かつ刺激的(すぎるくらい?)なセミナーになったと思います.
デザインの楽しさと厳しさを両方感じることが出来たのではないでしょうか.

(山口敬太)