10/20 関西道路研究会

 

M2諏訪です。

 

10月20日に関西道路研究会・交通問題調査研究委員会による -第2回みちづくり・まちづくり WS- が京都市で開催され、研究室からは山口先生、M2諏訪、M1三輪・高林、B4吉武が参加しました。

関西道路研究会・交通問題調査研究委員会では、都市部における道路交通環境や自転車交通問題など、各種交通問題の現状と課題に関する新たな情報収集や調査研究を進めている研究会です。今年度は道路空間の再編に関して御堂筋完成80 周年記念事業と連携し、第1回に神戸市(7/26)と京都市(10/20)において現地見学と意見交換が行われました。

 

まず現地見学会では京都市建設局の方々から

①先斗町無電柱化事業(http://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000213736.html

②四条通歩道拡幅事業(http://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000191438.html

③細街路の自転車走行空間等(http://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000226889.html

④京都駅八条口駅前広場整備事業(http://www.city.kyoto.lg.jp/menu4/category/51-8-0-0-0-0-0-0-0-0.html

に関して現地で説明を行っていただきました。(詳しくは項目右の京都市HPを参照ください。)

以下写真とともに概要を説明していきます。

 

 

①先斗町無電柱化事業

先斗町通は、道幅が狭く、これまで実施してきた無電柱化事業の整備手法では、ガスや上下水道などの他のライフラインに干渉するなど、技術的に整備することが困難だったが、新たな整備手法である小型ボックスの活用や地中に設置する設備の縮小を図るとともに、地域の方々の協力を得ることにより実現が可能となりました。

平成27年度から無電柱化の検討を始め、平成31年度の完成を目指しています。民有地への地上機器の設置に関して、民間の方々や電力会社との協力のもと事業が進んでいることを伺いました。

 

先斗町の通りの入口に掲示された事業案内

電柱の撤去作業は街路の狭小さゆえに手作業で行われるそう。この円柱型の機器は約530kgもの重量。どうやって下ろすのでしょうか・・

地上機器が設置される予定の場所。これらの公共用地だけではなく、飲食店などの民有地(セットバックされたスペースや入り口付近の付属施設を活用)への設置が行われる。

舗装は現在検討中。現在は大部分がアスファルト舗装だが、かつては通りすべてを石材で覆った舗装が敷かれていた。

 

 

②四条通歩道拡幅事業

京都市では、平成13年に策定した京都市基本計画では「歩くまち・京都」を掲げ、それまでのクルマ中心社会から、「歩く」ことを中心としたまちと暮らしに転換するための取組を進めています。

四条通(烏丸通~川端通)の歩道拡幅事業は、平成17年に地元商店街からの要望から始まったシンボル的な取組であり、平成26年11月に整備に着手し平成27年10月末に完成しました。この事業により車道は4車線から2車線、歩道は3.5mから6mへと変化しました。

道路構造上の車線数減少の難しさや荷捌き用のスペースの調整、供用開始後の渋滞への対応など様々な苦労があったことを伺いました。

 

拡幅以前から残る地上機器により以前の街路幅を想像することができる。これらの地上機器も現在の街路と道路の境界部分に移設される予定。(下の写真のような状況に)

3台分のバスが停車することができるテラス型バス停(バス停が車道に張り出したもの)。16箇所に分散されていた四条通のバス停を4つのバス停に集約させた。

バスの停車により後続の車は停車しなければならない。(ゼブラ帯における追い越しは道路交通法違反ではないが、安全義務の問題がある)しかし、歩行者の空間を最大限拡張するという最初のコンセプトを実現させた京都市・関係者の方々の努力の賜物。

舗装に調和するよう色調が検討された点字ブロック。

 

 

③細街路の自転車走行空間等

京都市では、国土交通省・警察庁における、平成28年7月に「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の改定版の策定に伴い、平成28年10月に「京都市自転車走行環境整備ガイドライン」を策定しました。

幹線道路・準幹線道路・生活道路の分類(基本的に街路幅4m以上)とそれぞれの整備方針を定めています。今回は錦小路の事例について説明していただきました。

 

ベンガラ色は自転車の走行すべき空間を示す。薄い茶褐色は歩行者の空間であることを強調するため。特に通学路における安全対策により設置されている。

 

 

④京都駅八条口駅前広場整備事業

京都駅八条口駅前広場は、昭和39年(1964)年の東海道新幹線の開業以来、基本的な形は変わっていないため、待機スペースの不足や客待ちタクシーや観光バスの混雑、マイカーの路上駐車など多くの課題を抱えていました。

この改善のため、平成21年から関係機関と検討を重ね、2度の市民意見募集を経て、平成25年に都市計画を変更、平成26年から整備工事がスタート。一部施設の供用を開始しながら平成28年12月に工事が完了しました。

この事業により、駅から直結のテラス・タクシーのりばとおりばの分離・送迎スペース・駐輪場とバイク駐車場・路線バスのりば・貸切バス乗降場・サンクンガーデンの整備が行われました。

タクシーの業界団体との協議など多くの調整がなされたことを伺いました。

 

京都駅八条口リニューアルパンフレット(京都市HPより)

駅正面に設けられた送迎スペース。八条通の車線数変更(6車線→4車線)、パーキングチケット駐車場の廃止により、一般車や送迎バスの乗降スペースを整備。

ショットガン方式というタクシーや観光バスの乗り入れ方式。2.4km離れた鴨川西ランプの高架下に待機場を整備し、状況を知らせるICチップを活用することで、駅前広場への乗り入れ車の数を制限している。

駅前の歩行者用の空間を占拠していた自転車を収容するための地下駐輪場。

 

 

後半の会議では、

・京都市の事例紹介(現地見学箇所に関する説明)

・京都における道路景観デザインの取組事例紹介

・チューリッヒにおける道路空間の再編と広場の整備について

についての発表とそれらの事業に対する意見交換会が行われました。

 

京都における道路景観デザインの取組事例では、GK設計の方々から京のみちデザインマニュアル、京都市のサイン計画、御池通りの整備などに関する事業の紹介がありました。

京都の景観的な特徴を読み解き、調和を基本としながらも場所ごとに特徴のある景観を志向し、サインを配置する適切な場所の検討や、サインのディテールへのこだわりなど、京都らしさを追求する丁寧な姿勢にとても感銘を受けました。

 

私は修士研究で対象としているチューリッヒの事例について発表させていただきました。

 

チューリッヒでは近年、道路を中心とした都市空間のためのガイドラインが出版され、道路空間再編の動きが活発化しています。留学で滞在した際に収集した資料をもとに修士研究を進めています。

Röschibachplatz(チューリッヒ市HPより)

 

・日本における車道中心の道路空間は第一世代であり、公民の所有構造など時代とともに道路空間の構造を変化させてきた欧州都市と同列に語ることは難しく、現場の調整によっていま問題が見え始めている。

・道路は周辺の住民が共有する財産であり、官民境界などを超えた存在として扱っていくべき。

・様々な利害関係のもとに成り立っている道路整備事業においては、コミュニケーションの技術が重要であり、行政と住民のあり方の関係性を再構築するようなファシリテート、住民との合意形成のあり方を見つけていくべき。(そのプロセスのなかでの絵の見せ方やガイドラインのあり方の議論も進めていかなければならない。)

といった議論が特に印象に残りました。

 

私自身としても、欧州をフィールドにした研究を行っていく上で、都市構造や土地の所有形態の違いなど日本との比較は簡単ではないなかでも学べること・論文を通して伝えられることは多いと思うので、意識すべき内容をもう一度整理して研究を進めていこうと思います。

実務で行われている現場の状況を実地見学を交えながら知ることができ、学生という立場でありながら多くのことを学ぶことができました。また会議後の懇親会にも参加させていただき、行政の方々の苦労話ややりがいなどを伺うことができました。(唯一の学生の参加で戸惑いながらも皆様親切でとても楽しかったです。)

学部時代を過ごした大阪市立大学の日野先生と吉田先生に数年ぶりにお会いし、研究に関するアドバイスをいただくなど有意義な1日を過ごすことができました。

最後に、このような貴重な会を開催してくださった行政の方々・委員会の方々・先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

(M2 諏訪淑也)