RESEARCH THEME


ある地域の固有の風土を基盤に創り出された景観は、自然と人間との相互作用の歴史を表す文化的産物であり、人々はそれを風景として知覚する。風景は環境に対する人間のものの見方であり、歴史的に形づくられた文化的な事象である。都市・自然・インフラなどの環境のあらゆる変化において、景観/風景は評価の対象となる。地域の景観/風景は歴史学・地理学・文化史学・民俗学などの知見に基づき、長期的かつ幅広い視野から適切に評価することが求められるが、一方で、諸計画学の知見に基づき、人々の未来への意志や目指すべきヴィジョンを基礎とした地域づくりの戦略と空間のデザインが希求される。地域のまちづくり戦略のなかで求められる空間のありかたやその実現方策はさまざまであり、コミュニケーションとプロセスを尊重した丁寧かつ創造的な空間づくりと、それを実現するための仕組みづくりが求められる。この認識の上に、地域固有の風土、その歴史的・文化的特質を生かした総合的な地域づくりのあり方、<地域-空間-人間>系のシステムの再構築の方法を探っている。なかでも、1)都市史・都市計画史、2)風景論・文化的景観、3)地域再生・まちづくり、4)景観デザイン、に関する研究に取り組んでいる。(山口敬太)


 都市史・都市計画史  History of Urban Development and Politics

地域の景観は自然と人為(社会)の相互作用の結果、歴史的・文化的に形成・蓄積された総体としてあらわれる。景観の保全・形成に着目して、都市・地域の形成過程やその形成メカニズムの解明、計画行為の把握と効果の検証を研究課題とする。その研究対象は、歴史的な景観地から、インフラ整備や都市計画によってつくられた公園や緑地、水辺空間などさまざまである。とりわけ、地域社会や土木技術者などの都市を形成する主体の動きに着目して、社会基盤の形成、景観保全・整備などの歴史的事象の検証や実態解明を行うことで、都市形成・景観形成における主体とその理念、技術の影響を探ることを目指す。また、国土史という視点に立脚し、国土開発や社会基盤整備が都市形成に与えた影響を評価検証する。


 風景論・文化的景観  Cultural and Historical Landscapes Studies

日本の風土に根ざした風景の意味や経験の豊かさを理解し、現代に生かすことを目的として、景観の地域的特色や、風景を「見る」ための認識のありようを探求する。研究課題として、風景成立の基底にある歌や物語などにみる文学的自然観とその重層、信仰や仏教の世界観など、風景と風景を成り立たせる観念との関わり、固有の自然観・宗教観を背景とする空間の設えや造景の意匠や風景の特質、風景発生とその集団的共有化のメカニズムを明らかにする。
また、地域の固有の風土に基づき形成された文化的景観の成り立ちと形成要因、その特色、さらには地域主体に着目した景観の意味・価値の評価、景観を成り立たせている社会的構造の評価を行う。こうした景観形成/風景成立の構造・システムの読み取りや、持続・変容のメカニズムの検討を通じて、現代における風景再生の可能性や、地域の計画・デザインの方策を探る。


 地域再生・まちづくり景観デザイン Planning and Design for Territory and Landscape

人口減少時代に対応する持続可能で自立的な生活圏-生活空間の実現を目的とした、文化資源の活用と再生、観光開発と持続的な資源管理、これらを総合した地域戦略の立案の方法を探る。さらには、公共事業におけるデザインマネジメント手法や、既存インフラの機能転換、都市の緑地や公共空間の整備による都市・地域構造の再編可能性を探る。また、地域がそこに住む人々にとって様々にかつ固有に知覚されることを前提として、地域のアイデンティティやイメージアビリティ、場所への愛着や帰属、Social/Individual well-beingを高めるための方策を探求する。
一方、フィールド学習やデザイン実践を通じて、地域戦略の立案や、都市拠点やインフラ施設の景観整備の新たな計画手法を模索するとともに、ローカル・コモンズとしての景観・場所の再生を目的としたコミュニケーションベースの地域の空間デザインの技術開発と実践理論の構築を行う。


 必読/参考図書 

 大学生・大学院修士学生向け *ただし景観・都市計画分野の基礎的な文献は除く。

○都市史・都市計画史
「民俗のふるさと」 宮本常一 河出書房新社 1964
「町のなりたち」日本民衆史5 宮本常一 未来社 1968
「東京の空間人類学」 陣内秀信 筑摩書房 1985
「都市へ ―シリーズ日本の近代10―」鈴木博之 中央公論新社 1999
「日本の近代化と社会変動」富永健一 講談社 1990
「空間・時間・建築 <2>」 ジークフリート・ギーディオン 丸善 1969
「都市デザイン―野望と誤算」 ジョナサン バーネット 鹿島出版会 2000
「日本近現代都市計画の展開―1868-2003」 石田頼房 自治体研究社 2004
「都市美―都市景観施策の源流とその展開」 西村幸夫ほか 学芸出版社 2005
「日本公園緑地発達史」(上下巻) 佐藤昌 都市計画研究所 1977
「ランドスケープデザインの歴史」 武田史朗ほか 学芸出版社 2010
「「都市計画」の誕生」 渡辺俊一 柏書房 1993
「復興計画」越沢明 中央公論新社 2005
「東京都市計画物語」越澤明 筑摩書房 2001
「都市と緑地―新しい都市環境の創造に向けて」石川幹子 岩波書店 2001
「アメリカ都市計画の誕生」 ジョン・A. ピーターソン 鹿島出版会 2011

○風景論・文化的景観
「風土 人間学的考察」 和辻哲郎 岩波書店 1935初版
「景観の構造―ランドスケープとしての日本の空間」樋口忠彦 技報堂 1975
「花鳥風月のこころ」 西田正好 新潮社 1979
「風土と建築」 宮川英二 彰国社 1979
「農の美学」 勝原文夫 論創社 1979
「風景学入門」 中村良夫 中央公論社 1982
「空間の日本文化」 オギュスタン・ベルク 筑摩書房 1985
「日本の風景・西洋の景観」 オギュスタン・ベルク 講談社 1990
「日本人の心の歴史」上・下 唐木順三 筑摩書房 1993
「ゲニウス・ロキ」 ノルベルク・シュルツ 住まいの図書館出版局 1994
「風土としての地球」 オギュスタン・ベルク 筑摩書房 1994
「日本空間の誕生―コスモロジー・風景・他界観」阿部一 せりか書房 1995
「借景 日本の美術 No.372」 本中眞 至文堂 1997
「瀬戸内海の発見−意味の風景から視覚の風景へ」西田正憲 中央公論新社 1999
「日本風景史」田路貴浩・齋藤潮・山口敬太 昭和堂 2015

○地域再生・まちづくり/景観デザイン
「都市のイメージ」 ケヴィン・リンチ 岩波書店 1967
「知覚環境の計画」 ケヴィン・リンチ 鹿島出版会 1979
「実存・空間・建築」 ノルベルク・シュルツ 鹿島出版会SD選書 1979
「見えがくれする都市―江戸から東京へ」 槙文彦ら 鹿島出版会 1980
「意味の環境論」瀬尾文彰 彰国社 1981
「空間の経験」 イーフー・トゥアン 筑摩書房 1988
「場所の現象学 没場所性を越えて」 E.レルフ 筑摩書房 1991
「トポフィリア」 イーフー・トゥアン 筑摩書房 1992
「環境の哲学」 桑子敏雄 講談社 1999
「都市をつくる風景」 中村良夫 藤原書店 2010
「コモンズからの都市再生」 高村学人 ミネルヴァ書房 2012
「サステイナブル・コミュニティ」 川村健一ほか 学芸出版社 1995
「都市田園計画の展望―「間にある都市」の思想」 トマス ジーバーツ 学芸出版社 2006
「IBAエムシャーパークの地域再生」 永松栄 水曜社 2006
「コンパクトシティの計画とデザイン」 海道清信 学芸出版社 2007
「世界のSSD100―都市持続再生のツボ」 東京大学cSUR-SSD研究会 彰国社 2007
「人口減少時代における土地利用計画」土地利用研究会ほか 学芸出版社 2010
「ランドスケープ・アーバニズム」 チャールズ・ウォルドハイムほか 鹿島出版会 2010
「コンパクト建築設計資料集成 都市再生」日本建築学会編 丸善出版 2014

 など